2020年、もっともパフォーマンスの高かった金融資産は○○?

2020年平均リターンと最大損失率

今年1月に、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)から、
「GOLD OUTLOOK 2021(2021年の金の展望)」が出ています。

その中で、2020年の主要な金融資産の年平均リターン(Annual Return)と最大損失率(Maximum Drawdown)のグラフが出ています。

2020年の金融資産のリターンと損失
WGC “GOLD OUTLOOK 2021″より

NASDAQ(ナスダック指数)
Gold(金)
S&P 500(S&P500指数)
EM stocks(新興国株式)
Global Treasuries(全世界国債)
US Corporates(米国社債)
US Treasuries(米国債)
US HY(米国高利回り債)
EAFE stocks(北米を除く先進国株)
Commodities(商品)
Oil(石油)

1. もっとも成績だったのは「ナスダック指数」


まず、緑色のグラフから見てみましょう。
緑色は年平均リターンです。
緑色の線が0%から右にいっていると、年間でプラスの成績になったということ。
逆に0%から左にいっていると、年間でマイナスになったということです。

2020年でもっともプラス成績だったのが、大型ハイテク企業の多いナスダック指数でした。
年平均で43.9%のリターン。
コロナ禍の非接触・オンラインが日常となったので、これは当然のことと言えますが、43.9%は驚異的なリターンです。

そして2番目が金でした。
年平均で24.6%。
各国の莫大な財政出動と金融政策によって、大量の通貨が出回ったことが引き金となり、
ここ10年ほど低迷していた金価格は2020年に再度見直されることになったわけです。

3番目がS&P500の15.9%です。

逆に、大きくマイナスとなったのは原油でした。
原油は経済活動の源ですが、コロナで経済活動がストップしてしまいました。
金と原油は同じコモディティ(商品)に属する金融商品ですが、
世界情勢によってこうも真逆の結果になってしまうことがあるということですね。

2. もっとも価格が落ちなかったのは「米国債」


赤色のグラフは、年間の最大損失率です。
これはちょっとわかりにくいかもしれませんが、
年間で損をしてしまったということではありません。
1年のうち、もっとも下落した率はどのくらいか?をみています。

ナスダック指数だと23.5%ですが、
すごく簡単に説明すると、

2020年1月1日に、ナスダック指数を10,000円分購入しました。
2020年3月の大きな下落で、これが23.5%下落し、評価額が7,650円まで下がってしまいました。
しかしその後、ナスダック指数は持ち直し、2020年12月31日、43.9%のプラスで着地しました。評価額は14,390円でした。

ということですね。

一般的に金融資産で高い利回りを求めるには高いリスクを背負わなければいけません。
つまり最大損失率は何をみているかというと、その資産のリスクの大きさです



2020年、もっとも最大損失率が大きかったのは原油でした。
80%近くも下落しています。

その次に大きかったのが、ほぼ横並びで、米国株(S&P500)、先進国株、新興国株の30%強です。
今回のコロナの影響が世界中に波及したことがわかります。

そして1年を通じてマイナスにならなかったのが、安定資産の王道・米国債です。
2020年の最初に買っておけばずっとプラス圏で推移していました。

(今回の調査は、ある特定のETF(上場投資信託)を対象にしているため、他の米国債ETFは最大損失率が生じているものもあるかもしれません)

3. もっとも安定したパフォーマンスは「金」


みなさんはこのデータを見て、
2020年1月1日に投資するとしたら何に投資をしていますか?
ほとんどの人はナスダック指数と答えるでしょう。
最大下落率は23.5%もあったものの、
諦めずに持っておけば、年末には43.9%という大逆転が待っていたからです。

でもこれは誰しも分かるとおり、結果論です。
結果を見れば誰だって正解がわかります。


ここで注目したいのは、そう、金です。


金の最大損失率はわずか2.7%だったのに対し、リターンが24.6。
このパフォーマンスは実に素晴らしい。
普通、これだけのリターンを得るには、それに近いか、もしくはそれ以上のリスクを背負わなければいけません。

世界が不安と混乱に陥ったときこそ持つべき資産は「金(ゴールド)」と、
投資家は改めて金の価値を身にしみたと思います。


ですが、このデータだけを持って、金融資産は金で持つのが一番いい、とか言っているのではありません。

以前の記事にも書きましたが、
金は資産運用の主役ではありません。脇役です。

2020年は金融資産にとって、上にも下にも大きく揺れ動いた年でした。
世の中が不安になると、ボラティリティ(価格変動幅)は大きくなるのが常ですが、そんな中でもどっしり構えているのが金です

運用する資産の中に金を入れておくことで、
資産全体の安定をはかってくれるスタビライザーのような役割をしてくれるのです。

WGCも金を「戦略的資産」と言っています。

資産配分における金

金はどのくらい買うのがいい?資産に占める金の割合は◯◯%がベスト!

2021年2月15日

4. データの見方に注意!


今後もこういうデータを使いながら金投資の解説をしていこうと思っていますが、
一つのデータを持って安易にこうだと判断するのは気をつけてください。

今回のデータは、2020年1月から12月のキリのいい1年間のデータをもって判断をしています。

例えば、
市場全体が落ち込んでいた2020年4月から12月の9ヶ月間の平均リターンと最大損失率を見てみたらどうでしょうか?

上記の棒グラフとはまるで違った形になります。

金融資産のリターンや最大損失率は、どこを基準に見るかによって全く違った見方になりますし、
金融資産を売りたい人たちは、都合のいい期間のデータを見せてくることが往々にしてあります。


自分の資産を守るためには、自分で判断する能力が必要です。