スリーグレイセス金貨はわずか3分で完売!イギリスのモダン金貨はバブルか !?

スリーグレイセスは値上がり

今週、英王立造幣局から、とある金貨が販売されました。
その金貨の名は「スリーグレイセス(Three Graces)」。

1817年に鋳造された金貨のリバイバル金貨です。

デザインが大変美しく、
コインコレクターの間では人気の金貨の一つで、高値で取引されていましたが、
なんとそのリバイバルのコインが今週、販売されたのです。

スリーグレイセス2021

販売された金貨は、

2オンス金貨:限定335枚
5オンス金貨:限定160枚

と非常に限られた枚数だったため、
販売開始からわずか3分ほどで完売してしまいました。

描かれた3人の女性が表すもの


スリーグレイセスは、美しい3人の女性が描かれていますが、
この3人は姉妹だとされています。
そして女性たちは、イングランド、スコットランド、アイルランドの3カ国を表しています。

国は女性で表現されますが、代表的なのは地金型金貨でもあるブリタニア金貨ですね。

ブリタニア金貨

イギリスの代表的なコインであるブリタニア金貨は、
美しく知性的で、そして勇しさを感じる女性をデザインしており、
イギリスという国そのものの精神を表現しているように感じます。

ブリタニア金貨は地金型金貨ですので、昔はデザインが一定でしたが、
ここ数年は毎年デザインが変更されています。
いずれも実に素晴らしいデザインです。
私が初めて購入した金貨もブリタニア金貨でした。


では、スリーグレイセスに話をもどし、
手を携え合っている3人の女性(国)はなぜ描かれたのか?

まずこのモデルであるスリーグレイセスは、ギリシャ神話の全知全能の神ゼウスの娘をモチーフと考えられているようです。
アテネなのか、アフロディーテなのかはわかりません。

そして、3人の女性が手を取り合って描かれたのには、
3カ国の平等を表しているとされています


ただ、これは私の想像に過ぎませんが。。。

スリーグレイセスが造られた1817年はナポレオン戦争の終わった直後です。

1789年のフランス革命後、
ナポレオンがヨーロッパ大陸を席巻しましたが、
1815年、ワーテルローの戦いでナポレオンが失脚し、
13年にも及び苦しんだナポレオンとの戦争はようやく終結します。

その後の1817年に鋳造された金貨がこの「スリーグレイセス」でした。

イギリスの連合王国は一体となり、これからも手を取り合って偉大な国家を築き上げていこう!という表れだったのかもしれません

その後、英連合王国は世界の海洋国家として海外に植民地を広げ、
ビクトリア女王の時代に最盛期を迎えることになります。

75万円の金貨が翌日に◯◯◯万円!?


3人の女性を描くなんとも美しいデザインではありますが、
コイン市場はそんな優雅な状況ではなさそうです。

この2オンス金貨は造幣局の販売価格が4995ポンド(75万円)で売り出されました。
2オンスということは、金のグラム数は62グラムです。
金の価値で見ると、38万円ほど。
つまり、金にデザイン料や鋳造料、箱台など、様々な価値が付加されて、約2倍の75万円という金額になっています。

実はこれ自体は驚くことでもなんでもありません。
金貨にかぎらず、銀貨など、記念硬貨ではこれはあたりまえのことで、
金属素材の原材料費に上乗せして販売されるのが通常です。

驚くべきは、
これを仕入れた業者さんたちが販売している現在の価格です。

造幣局の販売の翌日には、なんと35,000ポンド(525万円)で海外のコイン商が予約販売をしているのです。
なんと7倍。
翌日に7倍の値をつけて販売しているのですから、恐ろしささえ感じます。

地金型金貨でこのようなことは起こりえませんが、
収集用金貨(コレクターズコイン)ではこのような取引が十分に起こりえます。
収集用金貨、いわゆるアンティークコインについても今後は記事を書いていきたいと思います。

地金型金貨は買うべきか?

金のコイン(地金型金貨)は投資対象によいのか?金投資初心者に向けて地金型金貨をわかりやすく解説します。

2020年9月20日

引き金は「ウナ&ライオン」


スリーグレイセス 。
この美しい金貨のデザインをしたのは、
19世紀に英王立造幣局の主任彫刻師として活躍した「ウィリアム・ワイオン(William Wyon)」氏です。

1839年にウィリアム・ワイオン氏がデザインした「ウナ&ライオン(Una and the Lion)」というコインはコイン業界ではとても有名で、
その美しさと希少性ゆえ、高値で取引されるコインの一つとなっていますが、

その「ウナ&ライオン」が、
2019年にリバイバルとして英王立造幣局より販売され、
このコインはとてつもない高値に跳ね上がったのです。

ウナ&ライオン2019

このことを知っているコイン業者さんやコレクターさんが、
今回スリーグレイセスに飛びついたことで、あっという間に完売し、あっという間に7倍という高値をつけているという状況です。

翌日に7倍というのはさすがにどうかと思いますが、
世の中の価格は需要と供給で成り立ちますので、
これが異常なバブルなのかどうかは一概には言えません。

しかも、イギリスのモダンコインに火がついていることは間違いなさそうです。