11月9日(月)夜に米製薬会社大手のファイザーが、
新型コロナワクチン開発の有力な研究結果を発表しました。
その直後、金(ゴールド)は1958ドルから1850ドルまで一気に5%以上の急落となりました。
なぜファイザーのワクチン開発に関する発表で、金価格が下がったのか?
金価格を左右する要因について考えてみたいと思います。
1. 株価上昇・債券利回り上昇・金価格下落
このニュースを受けて、
アメリカの株価指数の代表である、NYダウ工業株価指数(先物)は一気に上昇しました。
コロナ自粛からの解放という光明が見えたことによって、
景気の回復を期待してのことでしょう。
景気が回復すると株価は上昇していきます。
それと同時に、米国10年債利回りが急上昇しました。
債券利回りが上昇したということは、債券が売られたということです。
株が買われ、債券が売られる。
金融市場のセオリーどおりです。
ここで金価格がなぜ下がるのか?ということです。
それは、国債の利回りが上昇したことによって、国債の魅力が相対的に増したことです。
以前の記事でもお伝えしたように、
金投資における最大のデメリットは「金利を生まないこと」「インカムゲインがないこと」です。
コロナ禍に入って、アメリカをはじめとする世界各国は、
政府も民間もお金を調達しやすいように金利をゼロ近くまで下げました。
国債の利回りもほぼゼロです。
それゆえ、もともと利回りがゼロだった金(ゴールド)の魅力が相対的に増し、
コロナ前の1600ドル台から、2000ドル台までパワフルな上昇を見せたわけですが、
今度のその逆が起こったわけです。
国債の魅力が増し、利回りのない金の魅力が相対的に低下したということです。
このように、金価格は国債の利回りの影響をかなり強く受けます。
国債の利回りは政策金利と連動し、
政策金利は中央銀行が決めます。
ですので、金投資をする上で、国の金融政策の流れはみておく必要があるということを、金投資の初心者は知っておいてほしいです。
2. これから金価格は下がり続けるのか?
ワクチン開発が順調に進み、新型コロナが撃退されることによって、金価格は長期的に下がり続けるのでしょうか?
私はそうは考えていません。
なぜなら、先進国の債券利回りはしばらくは0近辺で推移し、
実質金利も極めて低い状態が続くだろうと考えているからです。
下は米国10年債利回りの「実質金利」を表したグラフです。
FRB(米連邦準備理事会)のサイトで見ることができます。
では「実質金利」とはなんでしょうか?
経済学的なお勉強になりますが、
「実質金利」とは下記の計算式で求められます。
「名目金利」から「インフレ率」を引いたものが「実質金利」です。
これだけ見ても難しいですね。
名目金利は10年債利回りと同じだと思ってください。
例えば、
10年債利回りが1%だったとしましょう。
この10年債を1万円分購入しました。
そうすると、1年後に利息として100円が入ります。
その間、物価の上昇も下落も起きなかったとしましょう。
卵が1パック100円で購入できたのが、
1年後も同じ100円と変わりませんでした。
(この卵は腐らない、保存食用の卵だとしますww)
物価の上昇は0、つまりインフレ率(物価上昇率)は0%です。
この場合、債券と卵100パックのどちらを購入しておく方が得をしたでしょうか?
誰が見ても分かるとおり、債券ですね。
債券を買っていれば100円得をしました。
この時の実質金利は、
名目金利1% ー インフレ率0% = 実質金利1%
となります。
逆にこのケースで、
物価上昇率が3%だったとしましょう。
卵が1パック100円で購入できたのが、
1年後は103円と上昇してしまいました。
この場合だと、債券と卵100パック、どちらを購入しておく方が得だったでしょうか?
それは卵ですね。
債券だと100円しか利息がつかないのに、卵はパックで300円も値上がりしています。
つまり、これは何を考えているかというと、
今、債券を購入している方が得か? 卵を買う方が得か?
を単純に比較してるわけですが、
このケースで言えば、
名目金利1% ー インフレ率3% = 実質金利 −2%
と、実質金利がマイナス2%となります。
これはどういうことかというと、
債券を買うと、表面上は1%の利回りがつくというお得な商品ですが、
物価の上昇がそれよりも大きいので、
債券を購入すると「実質的には」損をすることになる、ということです。
逆に、お金を借りる企業などは得ですね。
1%の金利で借りて、
3%の経済の成長、売上の成長を得られるわけですから。
すなわち、実質金利がマイナスの状況下では、
債券を買うと、実質的に損します。
実質的な金利がマイナスから見ると、
もともと金利が0の金(ゴールド)は金利が相対的にプラスになる、ということです。
今の実質金利がほぼ0、もしくはマイナスという環境下がまだしばらく続くことを考えると、
金(ゴールド)への注目はますます高まっていきそうです。