「金ETFがこれからの金投資の主役になる」
とお伝えしてきました。
金ETFや金投資信託は少額から投資がしやすく、手数料も安い。
そして証券口座を持っていれば気軽に購入ができるので、
金へのアプローチが簡単です。
かたや、純金積立や金地金(インゴット)、地金型金貨などは、
売り買いのスプレッドが大きく、
管理手数料や買付手数料も割高。
しかも金地金や地金型金貨にいたっては、小型の商品になればなるほど加工手数料が加わってさらに割高になります。
これだけ見ると、金ETFや金投資信託に軍配が上がります。
しかし、これはとても重要なことを見落としています。
それは売却時の税金です。
1. 金ETF・金投資信託の税金は20.315%
まず、それぞれの金商品の税金を分けると下記のようになります。
金ETF/金投資信託・・・・・申告分離課税 20.315%
純金積立/金地金/金貨・・・譲渡所得
金ETFと金投資信託は、株と同じ「申告分離課税」です。
これは給与所得や事業所得が多かろうが少なかろうが関係なく、
株や投資信託の売買益に対して一律にかかってくる税金です。
税率は20.315%ですが、
簡略化して20%と考えることが多いです。
例えば、10万円で買った金投資信託が15万円になった時に売却をしたら、
売却益が5万円です。
この5万円はまるまる手元に残るわけではありません。
5万円に20%の税金がかかります。
つまり1万円が税金としてもって行かれ、手元に残るお金は4万円です。
無職で給与がなければ、所得税はかかりません。
しかしこの税金は、あなたが仕事をしていようがしていまいが関係ありません。
株や投資信託で利益が出た場合、必ずかかってくる税金です。
2. 金現物は譲渡所得
一方、純金積立や金地金や金貨などの現物の取引は「譲渡所得」という扱いになります。
ここで譲渡所得について説明します。
譲渡所得とは、一般的に、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得をいいます。
国税庁のホームページより
ただし、事業用の商品などの棚卸資産や山林などの譲渡による所得は、譲渡所得にはなりません。
譲渡所得はマイホームや土地を売った時に発生した所得のことをよくいいますが、金現物を売却した時もこの譲渡所得となります。
なお、年に頻繁に売買を繰り返すときは事業所得などとみなされることがありますので注意していください。
そして譲渡所得は、さらに2種類に分かれ、それぞれ下記の計算式で譲渡所得金額を計算します。
短期譲渡所得:所有期間が5年以下の資産の譲渡
売却金額 ー( 取得金額 + 経費 )ー 特別控除 50万円
長期譲渡所得:所有期間が5年超の資産の譲渡
( 売却金額 ー( 取得金額 + 経費 )ー 特別控除 50万円 )÷ 2
例えば、下記の例で譲渡所得を計算してみましょう。
2012.12.10
田中貴金属で200gの金地金を税込小売価格2,500円で購入した。
かかったバーチャージは16,500円だった。
2020.08.30
田中貴金属で200gの金地金を税込買取価格7,000円で売却した。
かかったバーチャージは16,500円だった。
(バーチャージについては下記の記事をご覧ください。)
このときの譲渡所得は、200gの金地金を5年超保有していたので、長期譲渡所得となります。
ゆえに計算式は、
( 7,000 × 200 ー( 2,500 × 200 + 16,500 + 16,500 )ー 500,000 )÷2
= 433,500円
となります。
これが譲渡所得ですので、2020年の譲渡所得がこれだけであれば、これを2021年の確定申告時に譲渡所得として、給与所得などと一緒に総所得金額に合算します。
ここでポイントとなるのが、特別控除の50万円です。
この計算式からすると、売却益が50万円以下であれば、譲渡所得は0になるということです。
つまり、年間で売却益を50万円以下に抑えれば、売却益に対しては税金がかからないということになります。
これはとても大きいメリットです。
3. 純金積立が最強・・!?
金ETFで50万円の売却益が出た場合、その20%にあたる10万円は税金となり、
手元には40万円しか残りません。
しかし、金現物で50万円の売却益が出た場合、まるまる50万円が手元に残ります。
金ETFや金投資信託などのペーパー資産は、少額から買いやすい上に、手数料も安く、金投資に参入しやすい商品です。
しかし、投資は出口を必ず考えなければいけません。
税金のことまでトータルに考えた場合、
実は金現物に軍配が上がります。
そしてその中でも、純金積立は優れています。
なぜなら金地金や金貨は、そのままの大きさでしか売買ができませんが、
純金積立は細かいグラム単位で売却ができるので、
売却益を譲渡所得の特別控除50万円以内にコントロールがしやすいのです。
ただ、金ETFや金投資信託もNISA口座を使えば、売却益に対して税金を0にできますので、どの金投資商品でいくかは、その人の投資金額によって変わってくると思います。
ちなみに、
私の場合は、
●純金積立
●iDeCoでの金投資信託の積立
●特定口座での金投資信託の積立
を現在行っています。
なぜ特定口座で行っているとかいうと、特定口座内での株などの損失と、金の利益をぶつけて相殺するためです。
譲渡所得に関する正確な内容は国税庁のサイトよりご確認ください。
4. 金地金や金貨の購入金額は証拠を残す
金地金や金貨を購入する上で1つ気をつけてほしいことが、
購入したときの金額が明確にわかるものを残しておくということです。
取得金額が不明の場合は、売却金額の5%を取得金額と見なされてしまいます。
例えば、
50万円で購入した金地金を80万円で売却したら、売却益は30万円となり、
譲渡所得の特別控除50万円が効いて、税金は0に本来なりますが、
50万円で購入したという証拠がない場合、
売却価格の80万円の5%である4万円が取得金額となり、
つまり売却益は76万円となって、特別控除50万円を引いても26万円が残るので、譲渡所得がかかることになってしまいます。
ですので、特に金地金や金貨などを購入した際は、買ったときの明細は保管しておいてください。
いかがでしたでしょうか。
金融投資の主役は株や投資信託、国債なので、
いずれも売却益も配当も20%の税金とシンプルに考えればよいのですが、
金は投資する商品によって税金が異なるのはおもしろいところです。
税金の違いをうまく使い分けられるようになりましょう。