金先物取引(きんさきものとりひき)とは何か?なぜ危ないと言われるのか?わかりやすく説明します。

「先物取引(さきものとりひき)」と聞いて、
皆さんはどんなイメージをするでしょうか?

投資初心者の人は「先物」という言葉自体を聞いたことない人もいると思いますが、
この言葉を聞いたことのある方のイメージの多くは、

危ない

です。

実は金の投資というと、この先物取引をイメージする人が多く、
私が15年以上前に金投資を始めようと思い立った時に、
周りから「危なくない?」と心配された理由がここにあります。

私は当時、先物取引を知らなかったので、
なんで金の投資が「危ない」と心配されるのかが全くわかっていませんでした。

実際、2000年代前半は、
当時も金のバーやコインなどの現物も購入はできましたし、
金の積立のサービスもありました。

ですが、金投資自体がメジャーではありませんでした。

そんな中で今にして思えば、金投資の主体は確かに「金先物取引」だったように感じます。

1. そもそも「先物取引」とはなーに?


先物を簡単にいうと、

将来のある期日に、ある価格で受け渡しを行う約束をする取引


です。
こう言ってもよくわからないですよね。
具体的に説明しましょう。



例えば、今の日本国内の金価格は1グラムが税込で7,000円くらいです。

今日買えば、7,000円で1グラムの金を受け渡してもらえます。
つまりこれは、
今日、1グラムを7,000円で買うという約束をする取引です

これを現物取引といいます。
今日取引をするので、当然1グラムの金を受け取ります。



それに対し、先物取引は、
例えば、
1年後に、1グラムを7,000円で買うという約束をする取引です。

言い換えれば、
1年後の金の取引の価格が上がっていようが、下がっていようが、
今の時点で7,000円で取引するよ!と決めておくということです。

例えば、
1年後に金1グラムが8,000円に上がっていた場合でも、
7,000円という安い価格で購入ができます。
つまり、1年後に金1グラムを7,000円で購入したと同時に、
すぐに売ってしまえば、1000円の利益が出ます。

逆に、
1年後に金1グラムが5,000円に下がってしまった場合でも、
7,000円という高い価格で購入しなければいけなくなります。
つまり、1年後に金1グラムを7,000円で購入したと同時に、
すぐに売ってしまえば、2000円の損失になるということです。

現物取引ではその場で金の実物を受け取るのに対し、
先物取引では約束した期日に金の実物を受け取るか、
もしくは、現物を受け取らずにお金で決済し、損益を確定させてしまう方法もあります。

2. どうして先物というシステムが存在するの?


金を採掘する業者さんの立場で考えてみましょう。
金の採掘にはコストがかかります。
1グラム掘るのに仮に4,000円かかるとしましょう。

現在の金価格は1グラム7,000円です。

この価格なら、1グラム採掘できれば3,000円が儲かる!
どんどん掘ろう!と考えます。

ところが掘り出して、いざ売ろうとなった時に1グラム1,000円まで下がっていたとしたらどうでしょうか。


掘り出して売った時には、結局1グラムあたり3,000円の損失になってしまいます。

これではなんのために一生懸命掘ったのかわかりませんし、
金の採掘事業を安定的に継続できません。

だけど、掘った時に7,000円で買い取る約束がなされていたらどうでしょう。
市場では1,000円に下がってしまっているけど、
7,000円で買い取ってくれる約束をしているので、
収益を安定させることができます。

つまり、採掘する業者さんからすると、
買い取る価格が決まっているので、将来の事業の計画を立てやすくなるわけです。

上記のケースの場合だと、買い取る立場は損になってしまうわけですが、
逆に、金価格を買い取るときの価格が10,000円に上がっていたとしましょう。

そうすると、買い取る側は7,000円で約束をしているので、
市場よりも安い価格で購入することができます。

つまり、買い取る側も先物取引を行うことで、仕入れの価格を安定させることができ、将来の事業計画を立てやすくなります。

つまり先物取引とは、
金の供給側も、また仕入れる側も、
将来の価格変動のリスクを下げて、事業を安定させるために使うシステムであるということです。

これが本来の先物市場の役割です。

こう見ると、すごく良くできたシステムだと思いますよね。

3. なんで先物取引は「危ない」と言われるのか?


ところが先物取引は、そのシステムのとおり、
商品の受け渡しが将来になります。

受け取りに必要なお金を今持ち合わせていなくても、
受け渡しの時にお金を準備できれば良いわけです。

例えば、
現在、金が1グラム7,000円だとします。
私は1年後には金が1グラム10,000円まで上がると期待して、
金を1年後に1グラム7,000円で1kg(1,000グラム)分購入する約束をします。
つまり、700万円の現金を準備しなければいけません。

ところがそんな大金を私は持っておらず、
100万円しか貯金がありません。

当然、1年後に金を1kgも受け取るつもりはなく、
決済と同時に金を売っぱらうつもりです。

つまり、1年後に金1グラムが10,000円になっていれば、

1,000万円 ー 700万円 = 300万円

の利益を手にするつもりでいました。

ところが、

私の予想とは裏腹に、
金は1年後に1グラム5,000円に下がってしまいました。

でも1グラム7,000円で購入する約束は守らなければいけません。

500万円 ー 700万円 = ー200万円

でも貯金は100万円しかなかったので足りず、
誰かからお金を借りるしかなくなってしまいました・・。


そう、これが先物取引が「恐い」「危ない」とイメージされている由縁です。

現物取引であれば、その時点で購入に必要な現金がなければ購入ができないのですが、
先物取引は、将来の約束をするがゆえに、
必要な現金を今持ち合わせていなくても取引の約束をすることできてしまうのです。

持っている現金の範囲内での先物取引であれば全く心配はないのですが、
人間とは欲の皮がつっぱった生き物で、
「これは儲かる!」と思ったら、
リスクを侵して、持っている現金の範囲を超えた額で取引をしてしまうものです。
これによって大損をこいてしまったり、借金をせざるを得なくなる人がたくさんいるわけです。


私から言わせると、
「先物市場は危ない」は間違いで、

先物市場で危ない取引をしている人がいる

が正確な解釈です。

4. 先物取引の歴史は「穀物」から始まった


今回は金の先物取引について、簡単に説明しました。

先物取引は、金などの貴金属や原油、穀物などの「コモディティ」と言われる商品で行われていることが多いですが、
株式市場や債券市場でも存在します。

ただ、歴史的には穀物からスタートしています。


先物市場はアメリカのCME(シカゴ・マーカンタイル・エクスチェンジ)が最も大きな市場で有名ですが、
CMEと穀物の先物取引の歴史が楽天証券のホームページに載っていますので、
興味がある方は読んでみてください。

楽天証券「米国の先物取引の歴史」

これによると、米国の先物取引は1840年代からスタートしたようですが、
日本ではなんと1600年代の江戸時代から先物取引がなされていたようです。
これも楽天証券のホームページに書いてありましたので紹介します。

楽天証券「日本の先物取引の歴史」



ちなみに、
トップの画像にもあるとおり、
英語で先物取引のことを「Futures(フューチャーズ)」といいます。
そのまんまですね。

現物取引が「Spot(スポット)」です。