2021年1月28日にワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が発表したデータによると、
2020年の世界の金需要は3,760トンと、4,000トン以下となり、
2009年以来の低い需要となりました。
下は2019年と2020年の金需要を比べたものです。
色分けされているのは需要別です。
- ピンク:中央銀行・その他の機関
- 濃い紫:ETF・投資信託など
- 薄い紫:金地金・金貨
- 濃い緑:テクノロジー
- 薄い緑:宝飾品
2019年に比べて、2020年は金需要が全体的に明らかに落ちているのがわかりますね。
これらを数字で見ていきましょう。
2019 | 2020 | 増減率 | |
中央銀行・その他の機関 | 669 t | 273 | – 59.2 |
ETF・投資信託など | 398 t | 877 t | + 120.4% |
金地金・金貨 | 871 t | 896 t | + 2.9% |
テクノロジー | 326 t | 302 t | – 7.3% |
宝飾品 | 2123 t | 1412 t | – 33.4% |
トータル | 4387 t | 3760 t | – 14.3% |
こうみると、需要が増加したものと減少したものがハッキリ見えてきますね。
まず、中央銀行は需要が半分以下に激減しました。
新型コロナ対策で金を購入する余裕はありませんし、
資金の捻出に金を売却した国もあります。
そして、宝飾品も減少が目立ちます。
WGCのデータではこの理由についてあまり書かれていませんが、
まず、宝飾品はファッションと同じで出かけるときに身に着けたりするものなので、新型コロナで人と直接会うことが少なくなると、宝飾品の需要は落ちます。
今回アパレル業界が悲鳴をあげているのと同じですね。
また、宝飾品需要は中国とインドがかなりの部分を占めます。
インドは結婚のときに娘のために購入しますが、
新型コロナで婚姻件数が減ってしまったことも原因の一つではないかと推察しています。
インドの婚姻件数のデータは見つけられていないのですが、
日本では2020年1月~11月の婚姻数は昨年比12.8%減と、
大きく減少しています。
これは2019年の「令和婚」の反動もあるので、
新型コロナによる純粋な減少とは取れませんが、
それでもコロナによる婚姻への影響は少なからずあり、
これはインドでも同様だと思われます。
もう一つ、宝飾品需要の減少にもっとも大きな影響を与えたのが、金価格の上昇です。
金投資をしていく上で重要なポイントの一つとして覚えておいてほしいのは、
金価格が上がると、金の宝飾品の価格も上がるので、金宝飾品需要は下がります。
逆に、金価格が下がると、中国やインドでの金宝飾品の買いが増えます。
金価格の上昇に影響を与えたのは、金への投資需要です。
ETFや投資信託などの金融資産、
そして金地金や金貨などの実物資産は需要が増えています。
とくにETFなどは2倍以上に需要が増えていますね。
膨大な財政出動によってばらまかれた通貨が金投資に流入した形です。
それに、一部の年金基金で金ETFの購入を始めているのも大きいですね。
2021年の金需要がどのようになっていくのかが楽しみです。